【研究レポート】レセプトデータによる不妊治療の保険適用後の初期実態調査について

レポート

当社(日本システム技術株式会社 以下、JAST)では、独自に保有している匿名化済の診療報酬明細書(以下、レセプト)データを中心とした医療関連データを基に、調査を行った結果について紹介します。
  
2022年4月に不妊治療が保険適用の対象になりました。
高額な不妊治療ですが今回の保険適用により経済的負担が軽減され、子供を望むご夫婦にとって受けやすいものになりました。
今回は保険適用開始後の不妊治療の実態を、2022年4月から8月診療までの5か月分のレセプトデータから調査します。
  

【不妊治療の保険適用まとめ】
・窓口での負担額が保険診療の治療費の3割となります
・有効性・安全性が確認された一般不妊治療(タイミング法、人工授精)と生殖補助医療(体外受精、顕微授精、男性不妊の手術など)
 が新しく保険適用になります
・胚移植には保険適用の年齢と回数に下記の制限にがあります
  治療開始時、女性の年齢が43歳未満
  保険が適用される回数は、治療開始時に40歳未満で1子ごと6回まで、40〜42歳で1子ごと3回まで
・保険適用となっていない治療の一部は先進医療(※)として検討され、地域によって助成の対象となります
 ※未だ保険診療として認められていない先進的な医療技術等について、安全性・有効性等を確保するための施設基準
  等を設定し、 保険診療と保険外診療との併用を認め、将来的な保険導入に向けた評価を行う制度
  
 参考:(リーフレット)不妊治療の保険適用
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-01.html
  

<集計対象>

 ・調査対象: JASTの保有するレセプトデータ(約800万人 2022年11月時点)の内、2022年4月~2022年8月診療のデータ
 ・業態区分: 業態区分はJASTで独自に区分けし、保険者ごとに定義
 ・対象患者: 診療年月時点で満20~49歳の患者
 ・対象診療: 一般不妊治療管理料、人工授精、生殖補助医療管理料、採卵術、採卵加算、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、
        Y染色体微小欠失検査、精巣内精子採取術、体外受精・顕微授精管理料、採取精子調整加算、卵子調整加算、
        体外受精及び顕微授精同時実施管理料、受精卵・胚培養管理料、胚盤胞作成加算、胚凍結保存管理料、胚移植術、
        アシステッドハッチング加算、高濃度ヒアルロン酸含有培養液加算
 ・発生率:  (2022年4月以降新しく保険適用となった不妊治療の診療行為の算定があった患者数)/(対象期間の全患者数)
  
 参考:不妊治療に関する支援について
 https://www.mhlw.go.jp/content/20220801zentai.pdf

 

目次
 1 | 性年齢別
 2 | 診療年月別
 3 | 医療費
 4 | 業態区分別

     

1 | 性年齢別


今回新しく保険適用対象となった不妊治療の発生率を性、年齢(診療年月時点での5歳刻みの満年齢)別に集計しました。
  
25~44歳では女性の方が男性より圧倒的に多く、20~24歳、45~49歳の年齢層では男女差がほとんどありませんでした。
男性より女性の方が不妊治療を受けるようで、30代の女性がボリュームゾーンとなります。
  
生殖補助医療(胚移植)が保険適用されるのは診療開始時43歳までとなっているため、
それ以上の年齢であった場合は、治療断念もしくは自費診療と考えられます。
そのため、45~49歳には生殖補助医療以外(一般不妊治療など)の受診者のみ計上されています。
  


【図1】性年齢別不妊治療発生率

 


 2 | 診療年月別


不妊治療の発生率を診療ごとに集計し、診療年月ごとに発生率の推移を見ました。
こちらのグラフでは、一般不妊治療管理料、人工授精、生殖補助医療管理料、体外受精・顕微授精管理料、胚移植術に着目しました。
  
一般不妊治療管理料(タイミング法)は2022年4月に最も多く算定されており、保険適用待ちの方々が多かったと考えられます。
5~6月にかけて減少しますが、7月に増加します。
これは一般不妊治療管理料(タイミング法)が3月に1回の算定のため4月算定していた人たちが再度算定したため増えていると考えられます。
  
一般不妊治療管理料(タイミング法)以外の生殖補助医療や人工授精は4月から6月にかけ徐々に増加しその後維持傾向が見られ、不妊治療保険適用の制度が浸透している様子が見られました。
  

【図2】不妊治療発生率の推移

  

 3 | 医療費


続いて、不妊治療の医療費について見ていきます。
診療年月ごとのレセプトの総医療費に対して占める不妊治療の医療費の比率を医薬品、診療行為ごとに可視化しました。
医薬品はJAST基準で不妊治療の対象となる医薬品を選定したものを使用しています。
  
診療行為は2022年4月時点で総医療費の約0.34%でしたが5,6月にかけて約0.9%まで伸び、その後の7,8月にかけて維持傾向が続いています。
医薬品は2022年4月時点で総医療費の約0.10%でしたが5,6月にかけて約0.18%まで伸び、その後の7,8月にかけて維持傾向が続き、診療行為と同等の傾向となっています。
  
上記2.診療年月別の患者の発生率と比較した場合、高額な人工授精、体外受精・顕微授精管理料、胚移植術が4~6月にかけて伸び、その後維持と同様の傾向が見られ関連性が伺えます。
一方、一般不妊治療管理料は金額が高くないため、医療費の傾向に大きな影響は与えていないようでした。
  
総医療費に対する不妊治療費の割合が直近の8月時点で約1.05%と医療費の面で大きなインパクトを持つことがわかりました。
今後どのように推移していくのか引き続き調査が必要です。
    

【図3】総医療費に対する不妊治療の医薬品、診療行為の医療費の比率


4 | 業態区分別不妊治療発生率


性年齢別と同様に被保険者が加入する保険者の業態区分ごとに算定人数の発生率を集計しました。
「医療、福祉」、「教育、学習支援業」、「金融業、保険業」の順に不妊治療算定の発生率が高い傾向が見られました。
「金融業、保険業」は他二つに比べて女性の割合が高くないですが、不妊治療を受けられる割合が高いようです。
  
「サービス業(他に分類されないもの)」は女性の割合が65%を超えていますが、不妊治療を受ける割合が他の業態と比べて低いようです。
「宿泊業、飲食サービス業」も同様の傾向が見られました。
  

【図4】業態区分別不妊治療発生率


厚生労働省から企業に働きかけ、不妊治療が行いやすい社会環境作りが進んでいます。
以下に事例を3つ紹介します。
  
・「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」
 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30k.pdf
  
・「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」
職場内で不妊治療への理解を深めていただくために、不妊治療の内容や職場での配慮のポイントなどを紹介したハンドブック
 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30l.pdf
  
・「不妊治療連絡カード」
不妊治療を受けている従業員等が、企業側に、不妊治療中である事を伝える際や、企業独自の制度等を利用する際に使用する等、仕事と不妊治療の両立を行う従業員の方をつなぐツール
 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30b.pdf
  
  
今回の分析により、不妊治療の保険適用後の5か月間の推移、性年齢別、業態区分別の算定の実態を調査しました。
  
不妊治療の保険適用の方針は少子化に対処し、安心できる社会保障の構築にあります。
本レポートを通して保険適用後の不妊治療の算定が継続的に行われている様子がわかりました。
簡単ではありますが、レポートを通して制度と活動の紹介を行い普及に貢献できればと思います。
企業勤務の従業員を含め子どもを希望する全ての人が笑顔になることを願っています。
  
今回は保険適用が開始された4月からの5か月間を見ましたが、レセプトデータの強みを生かして、継続して実態を見ていけたらと考えています。
  
JASTでは、健康保険組合様ごとの不妊治療受診者数や関連費用の推移、他組合との比較などをまとめたレポートをお出ししています。
他にも、データヘルス計画の策定支援や事業実施支援の一環として、特定健診の受診勧奨通知や重症化予防事業などのサービスも行っています。


  
気になる点、詳しく知りたい点などがございましたら、下記アドレスまでお気軽にお問い合わせください。

本件レポート内容に関するお問い合わせ先
 E-mail:rezult@jast.co.jp

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