当社(日本システム技術株式会社 以下、JAST)では、独自に保有している匿名化済の診療報酬明細書(以下、レセプト)データを中心とした医療関連データを基に、調査を行った結果について紹介します。
今回は保険者の業態区分ごとの医療費や主な疾病・医薬品の違いについて調査しました。
業態ごとに被保険者の年齢にばらつきがあるため、今回は10歳刻みで年代を区切って比較しました。
<集計対象>
・調査対象 : JAST保有レセプトデータ約800万人(22年9月時点)のうち、2021年度(21年4月~22年3月診療)データ
・業態区分 : 業態区分はJASTで独自に区分けし、保険者ごとに定義
・対象患者 : 2022年3月31日時点で20~69歳の被保険者(被扶養者は除外)
・疾病区分 : ICD10 国際疾病分類第10版(2013年版)の3桁分類
・医薬品区分: 欧州医薬品市場調査協会(EphMRA )分類法基準の ATC 分類の3桁分類
目次
1 | 業態区分・年代別 一人当たり平均医療費
2 | 業態区分・年代別 傷病患者数ランキング
3 | 業態区分・年代別 医薬品医療費ランキング
1 | 業態区分・年代別 一人当たり平均医療費
こちらは、業態区分・年代別の患者一人当たりの平均医療費のグラフです。
どの業態も年齢が上がるにつれて一人当たり医療費は高額になっていきます。
「医療,福祉」の20~30代の年代、「学術研究,専門・技術サービス業」の40代、60代、「情報通信業」の50代以上がそれぞれ他の業態区分と比べて一人当たり医療費が高くなっています。
業態により、肉体的・精神的に仕事が忙しくなる年齢に差がある、等の理由が考えられます。
2 | 業態区分・年代別 傷病患者数ランキング
次は業態区分・年代別に患者数の多い順に傷病を上位10位までの一覧を見ていきます。
全体的な傾向として、20~40代は視力関係や花粉症、風邪などが多いです。
50代では脂質異常症、高血圧が2、3位に上がり、60代でその二つが逆転し、高血圧、脂質異常症が1、2位となります。
業態区分ごとに細かく見ていくと、「建設業」と「運輸業,郵便業」では40代から脂質異常症が1位になります。
他の業態区分では40代の上位3位に生活習慣病が入ってくることはなく、特徴的と言えます。
これらの業態では特に早期の生活習慣病の予防策が推奨されます。
「建設業」、「運輸業,郵便業」以外の業態でも、40代、50代から生活習慣病が高い順位に上がっている業態は特に注意が必要です。
全業態の傷病患者数ランキング上位10位までの一覧はこちら(https://jmics.jp/wp-content/uploads/2022/09/report-2209_08_2.pdf)
3 | 業態区分・年代別 医薬品医療費ランキング
業態区分・年代別に医療費が多い順に医薬品を上位10位までリストアップしました。
生活習慣病関連薬では糖尿病用剤が全体の40~60代において上位3位以内に上がります。
「建設業」の50代と「サービス業(他に分類されないもの)」の60代において糖尿病用剤が抗腫瘍剤を抑え1位となっています。
特にこれらの業態では、糖尿病の重症化予防の取り組みを行うことで今後の医療費の削減が見込まれます。
「運輸業,郵便業」、「複合サービス事業」において30代の上位5位に糖尿病用剤が入ります。
早期の予防対策事業や特定健診、特定保健指導を行うことで将来的に医療費の削減が見込まれます。
「学術研究,専門・ 技術サービス業」は他の業態と比較して糖尿病用剤の順位が低い傾向にあります。
全体の60代では糖尿病用剤は2位ですが、「学術研究,専門・ 技術サービス業」では10位となり、他とは異なる傾向が見られました。
全業態の医薬品医療費ランキング上位10位までの一覧はこちら(https://jmics.jp/wp-content/uploads/2022/09/report-2209_09_2.pdf)
今回の分析により、業態区分ごとに医療費が相対的に高い年代と生活習慣病を含む疾病の傾向が異なることがわかりました。
例えば、「学術研究,専門・技術サービス業」は60歳代から急に医療費が高くなるので原因を追究し適切な保健事業を行うことが必要です。
医薬品医療費ランキングでは他の業態と比較して糖尿病用剤の順位は低いので糖尿病の医療費は抑えられているといえそうです。
このように特定の業態、年齢層に向けて生活習慣病患者のフォローが必要となります。
生活習慣の改善や、糖尿病・高血圧・脂質異常症の重症化予防が出来れば今後の医療費適正化に大きくつながります。
今回は生活習慣病にスポットを当てましたが、今後は深く踏み込み業態区分ごとに特徴的な傷病などを見ていけたらと考えています。
JASTでは、データヘルス計画の策定支援や事業実施支援の一環として、特定健診の受診勧奨通知や重症化予防事業などのサービスを行っています。
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本件レポート内容に関するお問い合わせ先
担当者:平井 雅人
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